放射温度計は、なぜ、触れずに測れるのだろう。

1.すべての物体は、赤外線を放射しています。

熱くなったアイロンの表面に手を近づけると、私たちは温かいと感じます。これは、アイロン表面から出ている赤外線を皮膚のセンサーが感じるからです。 しかし、人間の皮膚は、物体の温度が低くなると赤外線をほとんど感知する事ができません。ところが生物のなかには高感度なセンサーをもっているものもあります。 例えば、ガラガラヘビは、真っ暗闇のなかでも、動物が放射するわずかな赤外線を感知し獲物を捕獲します。 図 1、2、3 はアイロンが熱くなる過程をわかりやすく説明するためにイラスト化したものです。 図のようにアイロンの温度が高くなるほど表面から強い赤外線がでていることがわかります。 物体の温度と赤外線の関係は、19世紀後半から20世紀はじめにかけて多くの物理学者により研究されてきました。 そして現在では、すべての物体が赤外線を放射し、放射の様子は、物体によってそれぞれ異なっていることが知られるようになりました。

熱エネルギーの運動が活発な状態
熱エネルギーの運動が活発な状態

すべての物体は赤外線を放射しています。この性質を利用して測温するのが放射温度計です。

波長で見た赤外線

熱エネルギーの運動が活発な状態

2.見えない光の赤外線は、ハーシェルによって発見されました。

赤外線の発見者はイギリスの天文学者W.ハーシェルです。 1800年、ハーシェルは太陽光をプリズムで分光し、各スペクトルの温度分布を調べているとき、赤光色の外側に、物体の温度を高くする目に見えない光があることに気づきました。 これが赤外線の発見だったのです。赤外線は肉眼では見えませんが、光としての性質をもち、太陽をはじめ、すべての物体から放射されています。 一般に光りといえば目に見える可視光線を指しますが、物理学の領域では目に見えない赤外線も光として考えています。 したがって赤外線は可視光線と同じよように反射、屈折、回折などの性質をもっており、遠くの物体からでている赤外線を光学系で集光することもできるのです。

3.温度と赤外線の関係を、詳しく調べてみましょう。

前章までで、すべての物体がその温度に応じた赤外線エネルギーを放射していることを説明してきました。そして、物体の温度が変化すると、放射する赤外線エネルギーが変化することも見えてきました。ここでは、赤外線と温度の関係や、赤外線エネルギーがどのように変化するのか、ということをもう少しくわしく見てみましょう。

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